院長エッセイ集 気ままに、あるがままに 本文へジャンプ

竜と蛇の狭間で


元旦は、心浮き立つと同時に身の引き締まる思いがするものである。自分自身の状況も周りの環境も、何ら変わるところがなくとも、年が改まると、襟を正し端座して、今年の目標・抱負などをつらつらと考えてみる。作者不詳の道歌に「立てそむる 志(こころざし)だに たゆまねば 竜の顎(あぎと)の 玉も取るべし」というのがある。志を立て、それに向かってたゆまぬ努力をすれば、竜のあごにあるとされる極めて貴重で入手困難な玉でさえ、手に入れることができるのだ。辰年の今年、心に留め置きたい道歌である。

 古来より中国では、竜は皇帝のシンボルとされ、その鳴き声を轟かせると、雷雲が立ち上り、雷鳴とともに竜巻となって天を駆け昇る。何とも剛胆で勇ましい昇竜よ。我が一年の計を託するに相応しいではないか。両のかいなを空に突き出して、新春の雄叫びを上げると、背後で細君がぼそりと呟いた。「竜頭蛇尾にならないでね」。


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