誕生日
私ごとで恐縮だが、今年九月一日で、開業二周年を迎えた。二年間の慰労と節目を祝うため、職員との食事会「よしかわ整形クリニック誕生会」を開催した。誕生日は、祝ってもらうとやはり嬉しいもので、家族の誕生日にはいつもケーキを買ってお祝いしている。小さなろうそくの明かりに照らされた笑顔を見るのはいいものだ。生んでくれてありがとう。生まれてきてくれてありがとう。感謝の気持ちを持ち寄って、皆が幸せな気持ちになる。昨年から、一周年を期に、職員の誕生日には、ペアの食事券をプレゼントしている。なかなか好評である。誕生日を祝う習慣の起源は諸説あるが、一説によると古代ギリシャまで遡る。月の神アルテミスの誕生日に、ケーキを捧げ、その上段にはろうそくまで灯したとある。西洋で一番盛大な誕生祝いはクリスマス。日本で誕生日を最初に祝った人は、織田信長であったらしい。宣教師からその風習を見聞すると、家臣に命じ安土城の天守閣で自分の誕生日を祝ったという。これは自己の神格化の手段ともされるが、歴史的真偽はともかく、新しい物好きの好事家・信長の単なる思いつきと捉えた方が面白い。
フルコースを締めくくるデザートに舌鼓を打っていると、ある職員が立ち上がってひと口上。「いつも自分たちの誕生日は祝ってもらっているのに、先生と利恵さんの誕生日を祝いそびれてしまいました。遅ればせながら私たちからの誕生日プレゼントです。」思いがけないサプライズに、私と細君はあわてて立ち上がる。食事券と温泉の入浴券、封筒に込められた大切な気持ちに目頭が熱くなる。「経営者として、私たちはまだまだ未熟ですが、クリニック共々これからもよろしくお願いします」。今更のように納得した。誕生日は誰でも素直になれる特別な日なのだと。
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